世界が考える伝統医学や統合医療とは?

日本でもインターネット上では見かけるようになった「統合医療」「補完医療」という言葉ですが、まだまだ身近で見かけることは少ないでしょう。日本の伝統医学としては漢方がありますが、扱える医師や薬剤師は多くありません。海外ではいわゆる現代医学が浸透していない地域もありますが、実際はどうなのでしょうか?

伝統医療は単なるおばあちゃんの知恵袋ではない

海外では、インドのAYUSH省のように国が伝統医学をサポートしていることもあります。2022年、WHO(世界保健機関)とインド政府は「WHO伝統医学グローバルセンター」の設立に向けた協定に署名しました。このセンターの目的は”現代の科学技術を通じて世界中の伝統医学の可能性を活用し、人々と地球の健康を改善させること”とされています(WHO HPより)。

薬の大元は植物から

日本では民間療法とよばれることもありますが、伝統医学/医療を見直すことで新たな薬や治療法の発見につながることもあります。実際、ノーベル賞を受賞した研究の中には、古来よりつかわれていた治療法を見直したことがきっかけのものもありましたし、天然の植物から新たな薬効のある成分を見つけることもあります。

日本最古の歴史書といわれる「古事記:因幡の白兎」の中にも、植物を薬としてつかっていたことが記されています。

だいこくさまはうさぎに言いました。「河口へ行って真水で体を洗い、そこに生えている蒲の花を摘んできて、その上に寝転ぶと良い」

うさぎが教えられた通りにすると、からだから毛が生えてすっかり元の白うさぎにもどりました。

身近なハーブも薬に

痛みやかゆみを抑える治療薬「アズノール軟膏」は、ハーブティとしても有名な「カモミール(カミツレ)」が原材料です。古来より花を乾燥させたものを風邪や胃腸症状、生理不順などにつかわれてきましたが、1930年代に主要成分「アズレン」の薬効がつきとめられました。

実際、アロマテラピーに用いられるカモミールジャーマンという精油は、アズノール軟膏と同じような香りと深い藍色をしています。

伝統医学の研究を近代化し品質と安全性を保つ

WHOによると、世界人口の約80%が伝統医学をつかっていると推定されています。過去の経験や知識、スキルを元に各地域で発展してきた伝統医学。だからこそ、個人差が大きくばらつくために、いわゆるエビデンスに乏しいともいわれがちです。

しかしながら、長年つかわれているものを否定する理由にはならず、新たに設立されたWHO伝統医学グローバルセンターは4つの主要戦略分野に焦点を当てた支援に重点を置いています。

  • エビデンスと学習
  • データと分析
  • 持続可能性と公平性
  • 革新と技術

各国にも研究機関や統合医療病院が設立され続けている

アメリカのNCCIHとは

NCCIH(National Center for Complementary and Integrative Health:国立補完統合医療センター)は統合医療に関する科学研究を行う連邦政府の主要機関です。NCCIHの使命は厳密な科学的調査を通じて、補完的・統合的な健康法の基礎科学、有用性、安全性および健康とヘルスケアの改善におけるその役割を明らかにすることで、科学的根拠のある統合医療を伝え、正しく各々が選択・活用できるよう活動しています。

イタリアにも統合医療センターがいくつも設立されている

地域法(2007年第9号)は、患者の治療選択の自由と医師の治療の自由の原則を保証し、補完医療の実践を保護するものであり、特に、ホメオパシー、鍼灸、フィトセラピーは、地域の医療サービスに不可欠なものとして認められています(Gruppo SALVATI HPより)。

トスカーナ地方で初の代替療法病院が誕生したとき、地域評議会の健康委員会会長であるFabio Roggiolani氏は、「患者の間に犠牲者を出すだけの古典医学と補完医学との戦争は終わりを告げます」と述べています。

スイスの統合医療は市民権を得ている

2009年、スイスで補完医療のある未来に対する国民投票が行われた結果、67%の賛成票(投票率38.8%)を獲得しました。連邦憲法に新たな条文が盛り込まれ、連邦と州の権限内で補完医療を考慮することを求めています。

あくまでも従来の医療と補完医療との連携を推進させるものという位置づけであり、統括組織には医師などの専門家組織や病院、学校、保健機関、スイス薬剤師協会および医薬品製造業者協会が創設メンバーに含まれています(協会HPより)。これにより、補完医療が再び基本保険にふくまれるようになったり(2012年1月1日より)、教育の推進が積極的に行われるようになりました。

限界があるからこそ補い合う

現代医療は原因がわからなければ対処できないため対症療法とよばれます。薬をつくるにしても、原因となる物質や状態がわからなければ、どこを目標につくればいいかわかりません。だからこそ、新しい発見をし続ける必要があるのです。

補完医療は原因がわからないなりに、こういう対処をして体をフォローすればいい(今でいう自己治癒力)と経験値からきているもの。感覚的な部分や合う合わないがあるので効率的ではないことがよくないと思われがちですが、薬でも治らないものや日にち薬とよばれるものがあるからこそ、補い合うことでより健康的にすごしやすくなるのではないでしょうか?

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