日本ではスギ花粉シーズンに入り、薬局にも花粉症の薬の処方箋をもってくる人が増えてきました。以前は目薬をさす場合はコンタクトレンズを外す必要がありましたが、最近はコンタクトレンズをつけたままつかえる目薬も販売されています。今回は、コンタクトレンズをつけたまま目薬をつかいたい人向けのお話です。
コンタクトレンズをつけたまま目薬をさしてはいけない理由
基本的に、コンタクトレンズをつけたまま目薬を使用することはできません。目薬にふくまれる防腐剤をはじめとする成分が、コンタクトレンズや目に損傷を与える可能性があるからです。
防腐剤による影響
防腐剤の中には、目を傷つけてしまう恐れのある成分があります。コンタクトレンズに吸着しやすい成分の場合、長時間にわたり成分がレンズや目に触れつづけることになります。これにより目の表面(角膜)への影響が懸念されますし、レンズが白濁したり変形する恐れもあるため、裸眼のときにつかうよう注意書きがあるのです。
充血を改善する成分による影響
市販の目薬を購入するとき、充血を抑えてくれるものを探す人も多いでしょう。血管を収縮させることで充血を抑えますが、同時に血管の中がせまくなることで血流が悪くなり、酸素が行きわたりにくい状態となります。ただでさえ、コンタクトレンズをつけるだけでも目の細胞の酸素不足が問題視されているので、充血を抑える目薬をつかうほど、より酸素不足におちいることになります。
そのため、以前は目薬をつかうときはコンタクトレンズを毎回取り外したり、一時的にメガネ生活をしたりしていました。
コンタクトレンズが普及し、目薬も進化
コンタクトレンズが普及したことや花粉症を発症する人が増えた結果、目薬をつかうためにメガネ生活を強いられることに不便を感じる声が大きくなりました。その結果、防腐剤が含まれていない目薬や使いきりタイプの製品が開発されてきた経緯があります。
目薬に防腐剤が入らないことにもリスクあり
実は、まつ毛に細菌やダニがついていたりと、目は思っている以上に不衛生です。気を付けていても、目薬の先端が目の表面やまつ毛に接触してしまいがち。目薬に防腐剤が含まれていないと長期間の使用や複数回使用することにより、目薬の中に細菌が繁殖してしまうことがあります。
目の細菌感染を防ぐためには、開封から一か月程度を目安に目薬を早めに使い切る(必要無くなれば液が残っていても処分する)、あるいは、市販薬であれば多少割高ですが一回使い切りタイプの製品を使うようにしましょう。もちろん、目薬を使う前に手洗いをすることも大切です。
コンタクトレンズの種類によってつかえる目薬も変わる
コンタクトレンズにも、ソフトやハードタイプ、カラーコンタクトと種類があります。それぞれ材質が異なるので、目薬をつかうときにも注意が必要です。
ハードタイプのコンタクトレンズの場合
基本的に、ハードタイプは成分の影響を受けにくいといわれており、レンズをつけたまま目薬をつかうことができます。
ソフトタイプのコンタクトレンズの場合
次のような記載がある目薬をつかいましょう。
- コンタクト用
- カラーコンタクトをのぞく全てのコンタクトに使用できます
- すべてのコンタクトレンズに使用できます
ハードタイプ用の目薬は防腐剤が入っているなどソフトレンズにはつかえないことがあるため、注意が必要です。
カラーコンタクトの場合
レンズへの影響を防ぐため「すべてのコンタクトレンズに使用できます」と記載されているものをつかいましょう。
医療用目薬は「PF」と書かれたものが防腐剤無添加
PFとは「Preservative Free」の頭文字で、防腐剤無添加という意味です。特殊な容器に薬が充填されていて、防腐剤が入っていなくても細菌が入りにくい構造となっています。
薬の説明書(添付文書)にはコンタクトレンズ装着時には使用不可とは記載されておらず、医師と患者本人で決める形です。
Q. PF点眼薬はコンタクトレンズを装用したまま点眼してもよいですか?
A. コンタクトレンズを装用したままの点眼の可否については一概に決められるものではありません。患者さまの病状によってはコンタクトレンズの装用の中止を考慮する必要があります。PF点眼薬は防腐剤無添加ですが、コンタクトレンズを装用したままの点眼については患者さまごとにご判断をお願いしております。医師からコンタクトレンズを装用したまま点眼しても良いとの指示がある場合には、その指示に従っていただくようお願いいたします。
ロートニッテン よくあるご質問
PF表記がなくてもつかえる目薬もある
基本的にトラブルの原因となるのは「ベンザルコニウム」という防腐剤で、医療用の目薬の多くにベンザルコニウムがふくまれています。花粉シーズンにはカユミを抑える抗アレルギー薬が処方されますが、そのほとんどがベンザルコニウム入りのため、コンタクトレンズは併用できません。
そんな中、アレジオン点眼液0.05%は2014年12月に防腐剤をベンザルコニウムからホウ砂に変更したことで、コンタクトレンズの上からの使用が可能となりました。
ただし、アレルギー性結膜炎の状態なので、コンタクトレンズの装着自体を避けたほうがいいため、目薬云々の前にコンタクトレンズをつけていいかを主治医に確認する必要があるでしょう。
シーズン毎に成分の確認をしましょう
頻回に薬の中身が変更になることはありませんが、材料が入手困難であったり、アレジオン点眼液のようにトラブル解決のために工夫したりと、同じ薬でも以前と異なるケースはあります。つかえないと思っていた目薬がつかえるようになることも、逆につかえなくなることもあるので、できれば花粉シーズンに入る前に、一度情報を確認してみると安心ですね。
そのためだけに病院受診をするのが難しいのであれば、かかりつけの薬局にぜひ相談してみましょう。